@犯罪学とは

犯罪学は、「人はなぜ犯罪を犯すのか。」をテーマに発展している。

そして、犯罪学は、刑事学の一分野でもある。

●刑事学とは何だろうか?
→刑事学とは、犯罪の原因を探求し、犯罪対策を提示する学問である。

それを踏まえて、犯罪学の大まかな体系を説明していく。

●犯罪学は犯罪学現象論、犯罪原因論、犯罪学理論の3つに分かれている。

▽犯罪学現象論・・・犯罪の実態を分析し、その特徴を正確に分析する。
犯罪原因論・・・生物学、心理学、社会学など隣接科学の見地を応用しながら犯罪の原因を探求する。
▽犯罪学理論・・・犯罪現象や犯罪の原因を体系的、あるいは統一的に説明する理論を作る。

テーマは、“犯罪学と脳のかかわり”であることから、 この中でも、特に、犯罪原因論についての変遷をみていく。

※注意:私が論じていく中で脳とのかかわりに必要だと考えたものが中心のため、
全ての学説をあげていない。


●まずは、ロンブローゾの説について。

▽生来性犯罪者説
   犯罪者は生まれつき犯罪を犯すように運命付けられている。
  そして、犯罪者は身体的、精神的特徴をもっていて、一般人と識別できる、と考えられた。
  ロンブローゾによれば、将来性犯罪者には身体的特徴があり(例えば小さい脳、大きなあご等)、
  精神的にも「必ず〜がある」と定義された。

ただし、ロンブローゾはこの特徴をもつものが必ず犯罪者である、としたわけではない。


●次に、犯罪生物学について。

犯罪生物学
   犯罪者は生物学的に決定されているという前提(生物学決定論)に立つ。
  20世紀に入り、ドイツやアメリカ合衆国を中心に発展する。
  これは3つに分かれて発展する。
  犯罪性遺伝の研究、犯罪者の体型・生理の研究、犯罪に関する人類学的社会学。


しかし、犯罪学原因論はやがて衰退していった。

●衰退の理由

   犯罪原因論は、犯罪要因を生物学的・心理学的アプローチ、
  または社会学的アプローチから分析してきたものだ。
  要因がわかっても犯罪予防への対策を講じるものではない。

 20世紀前半から家系、双生児についての研究が発表された。
 1960年代にはアメリカ合衆国で犯罪社会(つまり、犯罪予防への対策が必要とされた)が発展。
 そして、犯罪生物学、犯罪心理学は衰退。
 1960年代半ばには染色体研究が脚光を浴びたが、短命に終わった。

  →犯罪原因の研究から犯罪予防への研究へかわっていった。

また1970年代では関心が薄かったようだ。[参考文献B]

しかし、1980年代には新しいアプローチである生化学神経生理学から研究が盛んになってきた。。

これまでの犯罪生物学は、遺伝学からのアプローチが中心だった。

遺伝学からのアプローチでは、結局のところ、悪性の生物学的要因を防ぎ、不良な子孫をなくす、
という優生学的思想につながり(ナチスのユダヤ人排除の活動と同じ)、
政治的に乱用される危険性があった。

▽生化学からのアプローチは
内分泌(ホルモン)と犯罪の関係を研究するものだ。

▽神経生理学からのアプローチは
脊髄など、末梢神経の働きを生理学的に研究する学問の領域である。

生化学や神経生理学からのアプローチは、従来問題点があった。
倫理的に、生きた人間の脳や神経を研究することに限界があったのだ。

しかし、科学技術の発達に伴って研究が可能になってきた。





→next▽A脳の分野からのアプローチ。


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